ひょんなことからのご縁で、「梅語りの会」を発起人(他に、山本晃氏、金谷優氏)の一員として開きました。
昨年秋山本先生の個展におじゃました際
お話が尽きず「じゃあ来年『梅の衣食住』で何かしましょう」と
先生がおっしゃってから5ヶ月。
応仁元年築、京都随一室町期の川井家住宅をお借りして開催。
一般の住宅なので普段は非公開なのですが、梅にまつわる話をということで、ご理解、お貸しくださいました。
梅の街・和歌山から数社、 和歌山みなべに住んでいる梅農家さん、そして梅染め関連の生徒さんやご友人。梅という小さな物が、こんなに多くの方を引きつけるのですね。やっぱり日本の伝統食です。
始まる前に、皆さんお庭を散策。ちょうど白梅が見頃でした。
お庭をご覧になった方から、梅酒のお湯割りを順番に。
梅酒ソムリエ金谷優氏より「身体が温まるお砂糖でつくった梅シロップです」とのこと。
皆さんに、まずほっこりしていただきました。
最初に、川井家住宅の川井清人氏に、お話をうかがいました。川井氏は、医師でもあり、安楽寺天満宮の宮司さんでのあり、お忙しい身。
何せ2日後に、北野天満宮の梅花祭を、「七保会」の一員としてなさるのですから……でも、でも、時間が経つのも忘れるような興味深いお話。
川井氏のご先祖が、従者として菅原道真さんを太宰府まで護衛して行かれたこと、そして亡くなってから日が経たぬうちに、京都に無事に帰って来られたその理由…細かい年号まで暗記されているのは、さすがにご先祖代々、口伝の賜物なのでしょう。
本当に敬服します。京都にはまだまだ、こうした「文献に残されていない話」があるのでしょう。京都の深さを知らされました。
最後には思いがけないサプライズが。
15年物の塩梅を全員にいただきました。北野天満宮の大福梅より古い製法で、ご自身でつくられた貴重なもの。「梅干しの場合は15年ものなら1粒数千円」らしく、ちょっと得した気分になりました。でも川井家秘伝の製法でつくられたものですから、そこには応仁元年からの歴史がつまっていて、とてもお金では買えないものでもあるでしょう。
だからこそ感謝とともにいただいて、食として自分のいのちをつなぐこと、日々を大切に生きていくことがせめてものお返しになるだろうと思いました。
太田氏は「梅ジャム自体がもう、とってもごちそうなので」と、シンプルなレアチーズケーキをアレンジしてくださいました。
「山椒をお好みで少しかけたり、あるいは後口にどうぞ」とのこと。
ケーキに山椒??っと思うのですが、いただいてみると、これがなかなか絶妙な大人の味♪
初めての経験でした。
金谷氏は、とても穏やかな口調で、笑顔の素敵な好青年さんです。
薬剤師さんでもあることから、薬学的な視点からでも梅を眺めている方。
そもそも、梅はお薬のような役目もありますから、薬剤師さんである金谷氏を引き寄せるのは当然と言えば、当然。
が、それ以上に金谷氏は幼少の頃ぜんそくがあったことからも、薬剤師→梅への関心、と梅に惹かれたのだろうなと思います。氏の口調には、今健康であることへの感謝の気持ちが常に感じられて、聴いているこちら側にもそれが心地よく伝わってきました。
【紅南高梅】
金谷さんが手に掲げているのは、大阪天満宮で行われた梅酒グランプリで、初のグランプリに輝いた「紅南高梅」。天候がよく、高い位置で日にあたったものだけが、この梅酒に使われることを許されるそうで、天候が良くないと出荷さえできないほどの貴重品だとか。
とにかく、素材そのものが稀少ということですから、この日に味わえた私たちは幸運。自然に、そして自然の恵みをこうしてさらに貴重なものに昇華させることのできる、中野BC(株)さんの技があってこそ。
【完熟みかん梅酒】
そうそう、ニュースな商品もあったのですよ。新発売になったばかりの「完熟みかん梅酒」。和歌山と言えば“梅”と“みかん”。この2大果実がコラボということで、和歌山にこだわった梅酒。
有田みかん100%の果汁は、糖度が11度以上の高糖度で、味の良いみかんだけを原料にした『味まろしぼり』のみだそう。何とも贅沢。
【龍神往来】
江戸時代に南部湾から「備長炭」「梅干(田辺梅)」が舟で大阪、江戸方面へ出荷された際、山間部の運搬に伝われていたルートの名称。
キトサンの右方で栽培された減農薬の南高梅を100%使用したものです。
【山椒のうめ酒】
意外なことですが、和歌山は山椒の出荷量が国内産の6割以上で、その数字は全国一だそう。山椒と梅、これも和歌山の名産コラボということになりますね。
5月中旬から実を採り、生の実が採れる期間は6月上旬頃までで、少しでも中の実が黒くなると商品価値がなくなるそうですから、生山椒の出荷時期は非常に短く、これもまた貴重なうめ酒です。
トリは、北野紅梅染 山本晃氏です。
さあ、どんなお話がと思っていましたが、「皆さん同士の交流もしてほしいから、まあ、梅染の話はまた今度」と。
気遣いの深い方ですね。
でもきっと皆さんお聞きになりたいでしょうから「山本先生の奥様とお召し物のご紹介をぜひ」とお願いしてみました。
媒染剤まで全て手づくりのきものは、奥様と同じように年を重ねるとともに色合いが変化してきたのだそうです。
色が熟すとでもいいましょうか。すてきなエピソードです。最近では草木染めでも天然100%のものは珍しい中で、全部の工程にこだわる北野紅梅染はとても貴重なものですね。
終わってみれば、
「わぁ、すごい。5者のコラボレーションだったんだわ」と今さらながら驚きました。
・安楽寺天満宮 宮司 川井清人氏(梅の住)
・北野紅梅染の作家山本晃氏(梅の衣)
・梅酒ソムリエ 金谷優氏(梅の食)
・ペーパームーン京都 太田伊保氏(梅の食)
・中野BC株式会社(梅の食)
イベントを企画して思うことですが、こうした集いは前例のない試みが多く、行き届かぬことも出てきてしまいます。
けれども、ご参加の皆さん、関係者の皆さんの温かい空気に包まれて、いつの間にか終わる感じ。感謝、感謝と胸をなでおろします。
受付や進行や配膳にドタバタの私を心配して、友人のこうはらちかこさん(コピーラーター&布こものかばん作家)が受付や配膳を手伝ってくださいました。
こうはらさん、ありがとうございました。助かりました!
そうそう、彼女の作品を、見ていただける場所があります。
今回ご協力のペーパームーン京都さんの2Fです。食とアートのコラボレーション、ぜひ、また味わいにお出かけくださいね。
翌々日25日には、2人の先輩と北野天満宮の「梅花祭」に出かけました。紅梅を見ながら「ああ、この梅のいのちが山本先生の梅染めに生かされている」と感慨深く……
景色は毎年変わらずとも、そのときのつながりによって、いつもと違う目線で見ることができるのだと発見しました。
<ご出席の方がブログに書いてくださいました。感謝です>
→ おもしろタノシズム TPOカンパニー代表 田井ヨシフミのブログ