目の前の相手をどう呼ぶ?
「あなた」「あなた様」「お客様」「〇〇様」……目の前にいる人をどう呼びますか?
また、手紙やニュースレターを出す相手をどう呼びますか?
従来、目上や自分と同等以上の相手を呼ぶ時に使ってきた「あなた」という言葉。
最近では、目上の人に使いにくくなっている現状もあるようです。
果たして「あなた」に変わる言葉はあるのでしょうか?

「あなた」の意味と語源は?
「あなた」は「貴方」「貴男」「貴女」とも書かれ、「貴」という漢字を使っていることを考え合わせれば、敬意が低いとは考えにくいと感じる人もいるでしょう。
しかし、「あなた」の意味を辞書で調べると、辞書により見解はさまざまです。
『広辞苑 第七版』では次のように書かれています。
あなた【貴方】(代)
(1)(「彼方 (あなた)」の転)第三者を敬って指す語。あのかた。
(2) 近世以後、目上や同輩である相手を敬って指す語。現今は敬意の度合いが減じている。男に対しては「貴男」、女に対しては「貴女」とも当てる。
(3)夫婦間で妻が夫を呼ぶ語。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
『明鏡国語辞典 第三版』ではどうでしょう。
あなた【<貴方><貴男><貴女>】
[代][二人称]
軽い敬語として、同等以下の相手を指し示す語。妻が夫を親しんでいう場合や名前・身分などの分からない相手に使うことも多い。また、公用文で「貴下・貴殿」に代わることばとして使う。(例)[アンケートなどで]「あなたはどう思いますか」
(書き分け)かな書きが一般的だが、手紙などは漢字書きも好まれる。【貴男】は男性に、【貴女】は女性に使う。
(使い方)本来対等または目上の相手への敬語だったが、今は目上に使うのは失礼だとされる。よそよそしい語感もあり、対等の相手にも使われない傾向がある。
(『明鏡国語辞典 第三版』大修館書店)
『現代国語例解辞典 第三版』ではどうでしょう。
あなた【彼方・貴方】(代名)
(一)(彼方)話して、聞き手の両者から離れた方向、時、人などを指し示す。かなた。
(1)あちら。向こうの方。(例)山のあなたの空遠く
(2)以前。過去。また、未来。(例)千年もあなたのこと。(二)(貴方)対等または下位者に呼びかけて用いる。(例)あなたの名前は?
(1)対象の性別により、「貴男」「貴女」とも書く。
(2)公用文などでは「貴殿・貴下」に代わって用いられる。
(3)敬意の度合いは薄く、目上の人に対してはあまり用いない。
(4)夫婦間で、妻が夫に対する呼びかけに用いることが多い。
(『現代国語例解辞典 第三版』小学館)
最新の『広辞苑 第七版』からは、「あなた」という言葉は、「目上や同輩者以上の相手に対して、敬意を示す呼び名として使われてきたが、近年は敬意が減じている」ことが分かります。目下の相手に使うとまでは、書かれていません。
一方、『現代国語例解辞典 第三版』(2004年のものです)では、「対等または下位者に対しての呼び名」と書かれています。
また、『明鏡国語辞典 第三版』(こちらは執筆時 最新のもの)では、同等以下の相手を指し示す軽い敬語を意味するとあります。
総合的に判断すると、「あなた」という呼び方は、
・以前は目上や同輩者以上の相手に対して、敬意を示す呼び名として使われてきたものの、近年は敬意が減じている
あるいは
・対等もしくは、目下の相手に対しても「軽い敬語として」使われる。
また、共通する見解として
・公用文で「貴下・貴殿」に代わることばとして使う」言葉であることが分かります。
「あなた」の代わりに「あなた様」をどこまで使える
「あなた」を敬語としてそぐわないと判断した時、使える言葉として想定されるのは「あなた様」です。
<例文>
(相手からかかってきた電話で)
「失礼ですが、あなた様のお名前をお伺いしてよろしいでしょうか?」
このような場合は、使えます。
しかし、もしもビジネスの場面で、相手の名前がわかっている場合に使うことはかえってよそよそしく感じられますね。
「あなた様」は例文のように相手の役職や名前がわからない時の代名詞として考えるべきでしょう。
「あなた」(二人称単数)の使い方・場面・言い換え
目の前に相手がいる場合、相手の役職や名前が分かっていることが多いものです。
リアルに対面している相手(取引先、仕入れ先、社内の相手、お客様、友人・知人)の
そのような時には「あなた」や「あなた様」ではよそよそしく感じられることがあります。では、どう呼ぶといいのでしょうか?
「〇〇様」「〇〇部長」など、相手を直接示す役職や名前で呼ぶことが多いはずです。また、名前の分かっていないお客様に接する場合には「お客様」が適切です。
その他にも、相手ごとに場面を設定して呼び名を考えてみましょう。
<例文>
- (取引先有役職者に対して)「〇〇部長にはお世話になりっぱなしで、いつも感謝しております」
- (取引先担当者に対して)「〇〇様にはお世話になりっぱなしで、いつも感謝しております」
- (取引先担当者に対して)「〇〇さん、この仕事が一段落したら今度はお食事でもご一緒しましょう」
- (名前の分かっているお客様に対して)「〇〇様、いつもご利用いただきありがとうございます」
- (名前の分かっていないお客様に対して)「お客様、本日はご来店いただきありがとうございます」
- (社内の上司に対して)「課長はどのようにお考えでしょうか」
- (先輩に対して)「〇〇先輩、今日のスーツ、すごくお似合いですね」
- (同僚に対して)「〇〇さんは、もうお昼召し上がりましたか?」
- (教師や医師などに対して)「先生のお言葉に、いつも励まされています」
相手によっていろいろな呼び方がありますね。
適切に使う参考になれば幸いです。
まとめ
「あなた」は本来、敬意を含む言葉でしたが、現在ではその度合いが弱まり、目上の相手には適さないと考える人が増えています。また辞書にもそのように記されています。
「あなた様」も使えないわけではありませんが、状況によってはよそよそしさが出ます。
ビジネスの場では、相手の名前や役職で呼ぶことが、最も自然で丁寧な伝え方です。

