その挨拶、盛りすぎかも?「お帰りなさいです」と言う前に知っておきたいこと

出社のイメージ コラム
社会人のあいさつ

「おはようございます」

毎朝、何気なく口にしているこの言葉。実は、すでに立派な『敬語(丁寧語)』です。

学生時代は、普通に挨拶していたのに、社会人になったとたん「あれ、目上の人への挨拶も同じでいいのかな」と疑問に思うことがありませんか。
ビジネスシーンで上司や先輩に対し、「もっと丁寧に、もっと敬意を伝えなければ!」と考えすぎて、こんな言葉遣いをしてしまう(あるいは、後輩が使っているのを見かける)ことはないでしょうか。

×「お帰りなさいです」
×「ただいまでございます」

気持ちはとてもよく分かります。しかし、これらは語尾を無理に肉付けした結果、日本語として少し不自然な「盛りすぎ敬語」になってしまっています。

私たちが日常的に使っている挨拶には、その成り立ち自体に「深い敬意と配慮」が最初からしっかりと組み込まれているのです。

挨拶はすでに「敬語」

そうなんです。あいさつは、すでに敬語。
それぞれの言葉の背景にある「敬意の理由」を紐解くと、日本語の美しさと先人たちの配慮が見えてきます。

① おはようございます
もともとは歌舞伎の世界などで使われていた楽屋言葉です。自分よりも早く楽屋入りして準備や稽古をしている相手に対して、「お早くからのご到着、ご苦労様です」と労う気持ち(敬意)が丁寧語になりました。
目上の相手にも「おはようございます」で十分。礼儀正しいあいさつです。

② いただきます
食材となった尊い命や、その料理を作ってくれた人、運んでくれた人たちへ「(神仏や目上の人から)尊いものを頭の上に頂戴する」という最高の謙譲の姿勢から生まれた言葉です。
ご馳走してくれた相手や、何かを贈ってくれた相手に対して「いただきます」は、すでに謙譲の姿勢が伝わる挨拶です。

③ お帰りなさい
外で大変な仕事を終えて無事に帰ってきた人を、「本当にお疲れ様でした。どうぞお部屋へお入りください」と温かく迎え入れ、労うための敬意が込められています。
上司など目上の人にさらに丁寧に言いたい場合は「ませ」をつけて、「お帰りなさいませ」と言うといいですね。

④ ただいま
「ただいま」は、「ただいま(今しがた)、戻りました」という報告の「戻りました」が略された挨拶。日常の言葉「いま」をビジネスや公の場で丁寧にするための改まり語(改まり言葉)の一つです。待っていてくれた人に対して敬意を表すものです。
もし、ビジネスシーンで目上の相手にさらに丁寧に言いたいときは、「ただいま戻りました」と「戻りました」を加えるとよいでしょう。

⑤こんばんは
「こんばんは」は夕方以降に使う言葉です。この言葉をさらに丁寧に言いたいのは、どんな場面でしょうか。例えば、食事会や懇親会の席、夜に目上の人とバッタリ会った時、あるいは遅い時間に連絡を入れる時などが思い浮かびます。

実は「こんばんは」も「おはようございます」と同様に、かつては「今晩は、良い夜ですね」「今晩は、お寒うございます」などと、後ろに続く丁寧な言葉が省略されて挨拶として定着した歴史があります。つまり、言葉の成り立ちそのものに「相手を気遣う敬意」が含まれているのです。

もし、目上の相手に夜の挨拶を丁寧に届けたい時は、「こんばんは」という言葉自体を「こんばんはでございます」「こんばんはです」などと引き延ばすのではなく、他の言葉を加えるのがよいでしょう。

  • 社内の上司や先輩には……
    「こんばんは。お疲れ様です」「こんばんは。お疲れ様でございます」
    夜の社内では、自然で敬意が伝わる挨拶です。
  • 社外の取引先やお客様には……
    「こんばんは。夜分遅くに失礼いたします」「こんばんは。お忙しい時間帯に失礼いたします」
    夜間に連絡を取る、あるいは対面する際は、このように別の挨拶と一緒に使ったり、他の表現に置き換えたりします。
  • パーティーや式典の受付・挨拶では……
    「今晩は、お招きいただきありがとうございます」「今宵は、ご一緒でき光栄です」
    フォーマルな場では、感謝や光栄である旨の敬語を後ろに繋げることで、大人の品格が漂う挨拶に変わります。

挨拶の言葉を無理に引き伸ばさず、相手の状況を思いやる言葉を加える。これこそが、大人の挨拶です。

結論:挨拶は盛りすぎないほうがいい

このように、日本の伝統的な挨拶は、それ自体が相手を思いやる「完成された敬語」です。

もっと敬意を表したいからといって、不自然に言葉を引き伸ばす必要はありません。過剰に盛ってしまうと、かえって間違った敬語になる可能性大です。

上司や目上の人への挨拶で最も大切なのは、言葉を飾ることではなく、「完成された美しい挨拶を、心を込めて、ハキハキとした声でそのまま届けること」です。

身近な言葉ほど、先人たちの知恵と敬意がギュッと詰まっています。
明日からの朝の挨拶が、少しだけ特別なものになりますように。

★盛りすぎ敬語を取り上げた書籍
『その敬語、盛りすぎです!』(前田めぐる著・青春出版社)もぜひご覧ください。
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